堺刀司の歴史・技

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堺刀司と堺庖丁の歴史

二百年余年の時を超え、
継承される技と心

古墳時代の仁徳皇陵の築造に始まり、室町時代の鉄砲や日本刀の製造。
そして江戸時代に重用された「たばこ庖丁」製造など、堺の鍛冶技術は時代を経て発展を遂げ、
我が国の至宝とも呼べる「堺打刃物」へと結実しました。
「堺刀司」は文化二年の創業以来、堺の名匠たちが磨き上げた技や製法を現代に継承し、
料理を愛する方々に向けた「一生もの」の調理器具をご提供しています。

堺庖丁の品質を高めた分業制という
優れたシステム

堺では伝統的に、鍛冶・刃付け・柄付けと、それぞれの庖丁づくりの工程が独立し、各工程の職人たちが切磋琢磨して一本の庖丁をつくりあげます。
そうした分業制によって職人たちが技術を高め合い、優れた品質の堺庖丁が生み出されました。

伝統の技と新たな技術が生むより高品質な
「一生の道具」

創業二百余年の「堺刀司」が追求するのは「料理を愛し、料理を楽しむための道具へのこだわり」。
名匠の技と伝統の製法を受け継ぎながらも常に新しい技術を取り入れ、現在はモリブデン銅やオールステンレス庖丁などの新開発も手掛けています。

伝播と歴史

  • 室町時代
    仁徳天皇の御陵造り

    仁徳天皇陵が築造される際、農具や刃物とともに、全国から鋳造技師が堺の地に集められました。
    以降、技師たちは堺に住み着き、今日の鍛冶技術の礎を築いたとされています。

  • 平安~鎌倉時代
    鎌倉の大仏

    平安時代から鎌倉時代にかけては、金属加工や鋳造の優れた技術を持つ河内鋳造物師が活躍。
    梵鐘の製造で有名だった彼らは、鎌倉の大仏の鋳造にも加わったといわれています。

  • 室町時代
    日本刀

    室町時代には、たたら製鉄法による玉鋼を使った刀剣や武具づくりが盛んに。
    また、鉄砲や大砲の製造法を堺の商人が持ち帰り、優れた金属加工技術で量産に成功しました。

  • 室町~江戸時代
    タバコ庖丁

    室町時代の終わりには、タバコの葉を刻むための、切れ味に優れた堺製タバコ庖丁が人気に。
    その後、タバコ庖丁の需要はなくなり、堺では料理庖丁の製造が盛んになります。

  • 江戸時代
    出刃庖丁

    堺の海は豊かな漁場でもあり、古くは桜鯛の名所として知られていました。
    江戸時代にはこれを捌くために出刃庖丁が開発され、堺の料理庖丁が全国的に知られていきます。

堺刀司の鍛冶技術

鍛え抜かれた職人技
世界に誇る鍛冶の技術

長い歴史を持つ堺の優れた鍛冶技術は、代々に渡って、当地の職人たちに継承されてきました。
わずかな温度の差を自らの目で見極め、頃合いを逃さずに鋼を打つその技術は、ここ堺の地で数百年に渡って受け継がれてきた伝統の技です。
「他の産地とは念の入れ方が違う」と職人たちが胸を張るその鍛冶技術によって、料理のプロから家庭の主婦にまで広く愛される、「堺刀司」の庖丁が生み出されるのです。

刃物の本場「堺」で培われ、
守り抜かれてきた匠の技

熱のかけ方から泥塗り、焼き入れ、鍛冶の力加減にいたるまで、堺の鍛冶工場で師から弟子へと受け継がれてきた伝統の鍛冶技術。
火と鋼と伝統の技が織りなす、芸術作品ともいうべき「堺刀司」の和庖丁は、すべて鍛冶職人の手仕事によってつくられています。

名匠と呼ばれる鍛冶職人が
丹精込めて仕上げた一丁

「堺刀司」の庖丁を手掛けるのは、伝統工芸士に認定される名匠をはじめとする、熟練の鍛冶職人たち。
彼らは10度の温度差による色の違いをその目で見極め、まるで鋼や炎と会話をするかのように、目の前の一丁を丹精込めてしあげていきます。

堺刀司の研ぎの技術

最上の切れ味を生む
精魂を込めた研ぎの技

分業制が確立している堺の庖丁づくりでは、何百年という歴史のなかで、鍛冶職人と研ぎ師がそれぞれに研鑽を積み、素晴らしい技術を身に付けてきました。
「堺刀司」の優れた研ぎ師は、鍛冶職人のクセを見抜き。一丁一丁で異なる鍛冶の仕上がりに合わせて「研ぎ」を行います。
庖丁を生かすか殺すかは、まさに研ぎ師の腕次第。
精魂を込めた研ぎの技が、「堺刀司」の品質を支えているのです。

最高の鍛冶と最高の研ぎが
極上の切れ味を引き出す

堺では、鍛冶と同様に研ぎの技術も、代々に渡って職人たちに継承されます。
伝統工芸士に認定される名匠たちの手によって、丹精込めて研がれる「堺刀司」の庖丁。最高の鍛冶技術と最高の研ぎの技術の相乗効果によって、極上の切れ味が引き出されています。

仕上がりまでの工程は27以上
いかに研ぐかで庖丁が変わる

荒研ぎから仕上げまで、銘柄によって変わりますが、27もの工程で研ぎを行います。同じような庖丁でも、鍛冶職人のクセによって一丁一丁に違いがあり、そのクセを見抜くことも優れた研ぎ師の条件。「研ぎで庖丁が変わる」と言われるほど、研ぎ師は重要な役割を果たしています。

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    刃金つけ

    赤く熱した地金(軟鉄)に、硼酸、硼砂、酸化鉄などの混合物をつけた刃金(鋼)とを合わせ、炉に入れて約1000度に熱し鍛接(半型作り)。

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    先付け・切り落とし

    1の半型を約800度に加熱し、ベルトハンマーでたたきながら、庖丁の形を整えていく。たたき伸ばし、ほぼ形になったらたがねを入れて切り落とす。

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    中子とり・整形(型)

    再び炉に入れて熱し、ハンマーで整形し、たたき伸ばしながら柄になる部分を形づくる。その後、ほぼ形になっている物を所定の厚さ、大きさに整形する。

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    焼きなまし

    整形できた庖丁をわらの灰の中に入れ、徐々に熱をさます。

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    粗たたき・裏すき

    熱をさました庖丁の表面の酸化皮膜をハンマーでたたいて剥がし、ベルトハンマーで粗たたきをする。その後グラインダーで裏(刃金が付いている側)を研磨し、凹凸を取る。

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    仕上げおろし・断ち回し・歪みとり

    さらにハンマーで全体をたたき、ならしていくことで庖丁が鍛えられ、鉄が打ちひしめられる。ひずみや歪みを取ってたたき伸ばされた庖丁を型に合わせ、余分な部分を断ち落とす。

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    刻印打ち・摺り廻し

    裏に刻印を打った後、歪みやひずみを取る。そして全体をグラインダーで仕上げる。

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    泥塗り・焼き入れ

    油分やよごれを取り、焼きムラをおさえるため泥を塗る。その後、炉の余熱で乾かし、780度前後に加熱した後、一気に水につけて熱を取る。この時、泥が塗ってあることで大きな泡ができず、素早く均等に焼き入れすることが可能になる。焼き入れにより、刃金の硬度が高まる。

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    焼きもどし・泥落とし

    庖丁を再び炉に入れ160度~180度に熱し、水滴をたらしてその走り具合で温度を見る。技術と経験を要する高度なテクニックであり、電気炉を使うことも多い。この工程により、刃金に粘りが出て欠けにくい刃ができる。

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    歪みなおし

    焼き入れの際に生じた歪みを直すため、木製台の上に置き、ハンマーで打って直す。

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    荒研ぎ・歪みとり・平研ぎ

    研ぎ棒に庖丁をはめ、鉄のハンドルを利用したテコの応用により粗い目の回転砥石で全体を荒く研ぐ。刃先の肉を落として、角度を決め、木の台の上で、歪みを調整する。

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    バフあて・歪みとり・たがね入れ

    また研ぎ棒にはめ、庖丁の平面を研ぎ進め厚さを決める。砥石でついた荒い目を、バフを当てて細かくしていきながら、金床の上でたがねを入れ、歪みを取り、均等に砥石が当たるように修正する。

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    本研ぎ・刃ひき・歪みとり

    庖丁の刃先を研ぎ、刃をつけていく。刃ひきしながら仮の刃をつけておき、再度、歪みをならす。

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    裏研ぎ・バフ・刃あて・バフ

    鍛冶ですいた裏をさらに研いできちんとした形にくぼみを整える。バフを当てて目を細かくし、刃をさらにうすく研ぐ。バフで目を細かくしていく。

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    木砥あて・歪みとり・際引き

    木製の回転木砥で「目」をとおしていく。金剛砂を庖丁に塗り付け、木砥に当て、きめ細かな裏面にする。その後、歪みを修整し、しのぎ筋を際立たせるため、型枠にはめてしのぎ筋にそって木片(樫の木など)で摺りつける。

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    ボカシ・小刃合わせ・水拭き

    砥石の粉をねって泥状になったものをゴム片につけて切刃の部分をこする。これにより軟鉄の部分がくもり、刃金部分はさらにつやが出て、刃紋(刃境)がくっきり浮き出る。最後に目の細かい砥石で刃先を研ぎ上げ、かえりなどを取り、切れ味よく仕上げる。

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    油ひき・柄付け

    水をよく拭き取り、錆止めの油ひきをして最後に柄を付けて、完成。

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